戸田純一観戦記 

 奇想天外 ボディハイドストーリー~試合に隠された真実

東北大学OBの戸田純一氏による大会観戦記です。ビッグゲームを独自の視点で斬る書きっぷりをお楽しみさい。

 

戸田純一(とだ じゅんいち)

 昭和38年生東京都在住。浜松北高から東北大学へ進み、常に卓球部に所属。大学卒業後NEC に入社。その間も卓球を続けるが、卓球への情熱が抑えきれず退職してニッタクに入社。ニッタクでは「もの言う従業員」として製品開発に活躍。現在はアメリカの卓球メーカーKillerspin の製品開発マネージャーを務める。国公立大学卓球連盟理事会オブザーバー、第三回国公立大学海外遠征では団長を務めた。

 

スポーツ祭2013(国民体育大会)観戦記(2013年9月29日~10月3日)

 東京国体卓球競技が府中市総合体育館で開催された。

 成人男子の決勝戦は、戦前の予想通り東京対青森。ずば抜けた戦力を持つ両チームは決勝戦までまったく危なげなかった。特に青森の上田は、準決勝の山口戦で元全日本チャンピオンの吉村真晴を軽く料理し、東京に無言の挑戦状を叩き付けていた。

 東京は日本代表三人をそろえた。松平健太、松平賢二、高木和卓。対する青森は、上田仁、大矢英俊、町飛鳥。お互い手のうちを知り尽くした相手なだけに何が起こるかわからない。

 トップは松平健太対上田仁。松平健太が2-1とリードした第4ゲーム、上田が10-5と大量リード。そこから松平健太がなんとなんと7本連取で大逆転!世界選手権パリ大会での活躍がよほど自信になったのだろう。そこには以前のような勝ったり負けたりの松平健太の姿はなかった。準決勝の宮城戦でも社会人チャンピオンの軽部を3-0にした(二番で軽部は高木和に勝っており、相当調子がよかったはず)。「最後に勝つのは自分だ」と言わんばかりの自信に満ちたプレーをする成熟したプロフェッショナルに成長を遂げたニュー健太を見た思いがする。

 続く二番は、高木和対大矢。普段は東京アートのチームメートだ。相変わらずの前陣高速カウンターブロックで2-1とリードした大矢だったが、高木和のフットワークが高速ブロックに追いつきはじめ、最後は2ゲームを連取した高木和が勝利した。

 三番は、松平賢二対町飛鳥。この試合ももつれてファイナルゲームへ。最後は松平賢二がスーパーショットを連発してけりをつけた。

 地元東京が優勝!超満員の観客からウェーブが巻き起こるかと思ってよく見たら、観客のほとんどは高齢者だった。

 

その他の種目の概要は以下の通り。

成年女子:

 石川佳純の山口が東京を破って優勝。最後は石川佳純が決めた。この決勝戦までは観客席が超満員だったのに、この試合が終わったら半分ぐらいが空席になってしまった。やはりメダリストの人気は桁が違う。

 

少年男子:

 青森山田の青森が愛工大名電の愛知を圧倒して優勝。少年男子で目立ったのは岐阜の酒井明日翔(エリートアカデミー)。インターハイ二冠の希望ヶ丘のエース、福岡の田添健汰を3-0にし、準決勝の青森戦では青森山田の及川を破り、森園からは先に2セット連取した。この調子でいけば、来年1月の全日本ジュニアでは優勝候補の筆頭になるだろう。酒井のバックブロックのときに、ワルドナーのイメージを少し感じる。「最初からここに来ることはわかってたよ」と言わんばかりの力の抜けた、ワルドナーにしかできない「神のボールタッチ」を。

 森園は追いつめられれば追いつめられるほど「やられたらやり返す」という半沢直樹的精神力を発揮し、ことごとく倍返しで切り抜けた。日頃の努力の賜物だろう。

 

少年女子:

 決勝は岐阜対埼玉。というか、岐阜には加藤姉妹、埼玉には平姉妹がおり、まさに加藤家対平家という家族対決。もし加藤家が源氏の末裔であれば源平合戦だ。まあそれはどうでもよいが、加藤家の妹・杏華が平家の妹・真由香を破って優勝を決めた。女子の試合はバック対バックのラリーになることが多いが、そこから先にバック強打を打てるのが杏華の強みだ(しかもミスが少ない)。真由香はバックハンドの強弱を見習うべきだろう。